
近年、飼い犬の平均寿命は伸びてきており、犬種にもよりますが14才〜15才とされています。
それに伴い介護が必要な老犬も増えています。
徐々に変化していく愛犬の老化に向けて、飼い主にとって何が必要なのでしょうか。
愛犬に介護が必要になった時の悩みとは?

最近では老犬のことを「おじいワン」や「おばあワン」と言う可愛いネーミングで呼ばれています。
穏やかで幸せな老後生活を送っているコをみると、犬は老いても仔犬の頃とはまた違う愛しさが有ります。
その反面、愛犬に介護が必要となった時は『飼い主が睡眠不足になりやすい』『力仕事である』『衛生面への気遣い』などが必要となり、飼い主がストレスや過労により倒れてしまうこともあります。
介護の悩みは主に以下のことが考えられます。
- 食事の世話
- オシッコやウンチの補助
- 歩行の補助
- シャンプーなど衛生面の問題
- 認知症の対策
避けて通れないこととはいえ、愛犬と飼い主共に負担を少なく快適に過ごしたいものです。
愛犬介護で悩まないための心構えとは?

できるだけストレスのない介護をしていくために、早めの心構えと準備が必要です。
そして1日でも長く一緒に暮らせるように介護してあげたいものです。
介護の心構えのひとつとして『老犬は今まで出来ていたことが出来なくなっていくことである』と知っていると、心に余裕を持って愛犬に接することが出来ます。
反対に知らなければ「なぜ出来ないの!」「今までお利口さんだったのに!」と苛立ち、愛犬に辛く当たってしまうこともあるのです。
そうなってしまうとお互いに不幸です。
愛犬の行動で今までと違うと感じる部分があったら、まずはかかりつけの獣医さんに相談してください。
体の不調によるものか、老いて今まで出来ていたことが出来なくなってしまったのかを確認しましょう。
そして介護が必要になったらライフスタイルをどこまで愛犬に合わせてあげられるのか、それとも飼い主側を優先できる部分はあるのかを考えなければいけません。
家族に助けてもらえる事、獣医さんや老犬カウンセラーさんに頼れる事などを考えながら、出来るだけひとりで無理をしない方法で介護したいものです。
介護は「ゴールはここです」と決まっていません。
長距離を走るつもりで愛犬と共に快適な生活を心がけてください。
愛犬介護の悩みの理由と対処法は?

愛犬が少しずつ老いていき変化する様子を、日頃からしっかりと観察していくことが重要となってきます。
介護の悩み1『食事の世話』
シニアになると愛犬の嗜好が変化していき、食べ物を噛む力や消化能力が低下していきます。
それにより食が細くなれば必要な栄養素が摂れなくなり体力がなくなってしまったり、病気にもなりやすくなったりします。
筋力も低下していくので、食べやすい姿勢でフードを与えられるように、台の高さやお皿の位置の工夫が必要です。
首の筋肉の衰えから下を向くことが辛くなっていきます。
足腰が弱っていたら体を支えてあげたり、立っていられない場合は横になった状態で食べられるように補助します。
消化器官の衰えも考えて、1回のフードの量を少なめにして1日に与える回数を増やしてみる、老犬用の小粒や半生タイプに変えてみる、ぬるま湯でふやかして柔らかくしてみるなどの対策も必要です。
スープ状のフードもありますので、1日の必要栄養素が摂れるように工夫をしてみてください。
フードを残す量が増えてきたら獣医さんに相談が必要です。
味覚が薄れてきて、何も美味しく感じないという場合や、他の病気が隠れている場合も有ります。
介護の悩み2『オシッコやウンチの補助』
飼い主にとって大きなストレスになるのは、排泄物の処理と臭いではないでしょうか。
今まではお散歩中やおトイレでちゃんとしてくれて、処理もすぐに終えられたのに「どうしてこんなところで……」という場面が増えていきます。
我が家でも絨毯の上にした排泄物が、強烈な匂いなのに拭いても拭いても取れないということもありました。
愛犬にとっては決してわざとではないのですが、様々な場面に直面します。
- トイレに行こうと思ったら途中でお漏らしをしてしまった
- 痴呆により徘徊時に排泄してしまった
- 体をうまく動かせなくて、ちゃんとトイレの中にしたつもりがはみ出してしまっていた
常に部屋の中はピカピカでお花やアロマのいい香りを漂わせて……なんて生活とは全く違ってきます。
お漏らしをしてもすぐに拭くことができるように絨毯を外したり、フローリングにオシッコシートを引き詰めたりと、お客さんを招き入れられるような部屋の状態からは遠ざかります。
排泄物の臭いがどこかから漂ってくるけれど、探してもどこでしたのか見つけられず「なぜこんなところで?」と首を傾げることもしばしば。
今まではお散歩中やトイレの中でしかしなかった愛犬も、老いるにつれてソファやクッションの上、ソファと壁の間、植木の後ろ、カーテンの裏などなど、不思議なところでするようになります。
我が家はウンチがついたカーテンを丸洗いすることもありました。
トイレの場所については、
- 愛犬に負担のない距離にトイレを置いてみる
- トイレを複数至る所に置いてみる
- トイレまでの誘導と安全のためサークルなどで区切ってみる
愛犬の行動を観察した上で再度トイレの場所を考えてみてください。
排泄の仕方が変わってきたら
老犬は筋肉が衰えて排泄の姿勢がうまくとれなくなっていきます。
ふらついたり、よろけたりしている場合は支えてあげます。
【オシッコの場合】
なかなか出ない時は下半身をさすって排尿を促してみたりしてください。
【ウンチの場合】
うまく出ない時は、尻尾を持ち上げて肛門の周りを揉んで刺激してみます。
綿棒やオイルを使って刺激してあげる方法などは動物病院でも丁寧に指導してもらえますので、かかりつけの獣医さんに相談してみてください。
紙オムツの使用も考える
お漏らしが多くなったり、長時間のお留守番の時は紙オムツの使用を考えてみてください。
オムツをする場合、お尻周りの毛は剃ってしまい、排泄物がついた時に拭きやすいようにすることが大切です。
特に長毛種ですと排泄物が毛についてしまい、皮膚がかぶれたり皮膚病になってしまったりするので、出来るだけ毛を短くしてください。
尻尾の付け根周辺も剃っておくことがポイントです。
犬用オムツだけではなく、人間用のオムツでも尻尾の部分をくり抜いて使えます。
我が家も小型犬は人間の赤ちゃん用オムツ、大型犬は老人用オムツを使っていました。
介護の悩み3『歩行の補助』
愛犬にとってお散歩はいくつになっても楽しみなものです。
そして大切な運動でもあります。
筋肉が痩せ衰えないように、毎日適度な距離を老犬のペースで歩くようにします。
お散歩が大好きなコは好きな場所へ行く日常が、脳にいい刺激を与えます。
可能な限りお散歩は続けて行ってあげたいものですね。
歩きすぎて疲れるのは逆効果ですので、ペットカートに乗せて目的地まで行くことも愛犬にとってはとてもいい刺激になります。
後ろ足に力が入らず歩行が困難になっているようなら、タオルや補助器具を使って歩くことを諦めさせないことが必要です。
タオルを使う方法は、後ろ足の付け根あたりにタオルを通し、上から吊り上げます。上に引き上げるだけで、なるべく自力で歩けるようにします。
歩くことを諦めてしまうとすぐに自力で立てなくなり、寝たきりの状態になってしまいます。

介護の悩み4『シャンプーなど衛生面の問題』

介護が必要な愛犬はオシッコやウンチが体についてしまうことが日常茶飯事になっていきます。
臭いや皮膚病の予防のため、こまめに清潔にしてあげなければいけません。
体力も落ちているため、頻繁に全身のシャンプーはできなくなります。
その都度よく絞ったタオルで汚れた箇所を拭き取ってください。
刺激の少ない赤ちゃん用のウェットティッシュも使えます。
水を使わなくても済むドライシャンプーもあります。
お風呂場で全身シャンプーをする場合は、疲れさせないように手短に素早く終わらせてください。
ドライヤーも長時間は疲れさせますので、温かい日に吸水性の高いタオルを使うなど工夫が必要です。
小型犬であれば抱きかかえてお風呂場に連れていき、「お尻だけ」とか「足だけ」など部分的にシャンプーができますが、大型犬は連れていくだけでもかなり大変なので、まめに拭いてあげます。
体を拭いてあげる時の注意点などはこちらのエピソードもどうぞ。

介護の悩み5『認知症の対策』

認知症の特徴は
- わがままになる
- 夜鳴き
- 夜中の徘徊
- 食欲の急な増加や減少
などがあります。
その中でも飼い主にとって1番のストレスになってしまうことは『夜鳴き』です。
痴呆の症状が出てくると、昼間はぐっすり眠っているのに夜通しワンワンと鳴く場合があり、飼い主の睡眠が妨げられます。
ご近所迷惑も気になり愛犬の相手をしていると、飼い主は眠れなくなります。
『夜鳴き』に関しては認知症が原因だけではない
ところが、『夜鳴き』が始まると必ず認知症なのかというと、そういう訳ではなさそうです。
老犬になると視力や聴力が衰えてきて不安を感じ、飼い主を求めて夜鳴きをする場合があります。
また、どこかに痛みを感じていたり、トイレに行きたがっていたり、何か要求がある場合も夜鳴きが見られる場合があります。
加齢によるものだけではなく、脳血管障害や栄養代謝障害、ストレスなどが原因の場合もあるようです。
原因がわからない場合は獣医さんに相談しましょう
原因もわからずしょっちゅうお漏らしをしたり、名前を呼んでも反応しなかったりすると認知症が疑われますので、まずは獣医さんに相談してください。
現在認知症の治療薬はまだないようですが、DHAやEPAのサプリメントやフードを利用することもあるようです。
犬にだってプライドがある!1番大切なこととは

介護をすることになって「今まで出来ていたことが出来なくなる」ということは飼い主にとって辛くて負担も多くなりますが、愛犬自身もとても辛いことだと思います。
わたしは老犬が『ヨロヨロしてしまっても、粗相をしてしまっても絶対に笑わないことが大切』だと思っています。
人間と同じく犬にだっていくつになってもプライドがあります。
自分が馬鹿にされて笑われているとすぐに判断がついて、とても傷つきます。
嫌味や悪口などもなおさらです。
「あーあ、またこんな汚いこと!」「何も出来ないくせに」なんて辛辣な言葉はもってのほかです。
愛犬の前向きだった気持ちはすぐに悲しさに変わり、やる気も何もかも失せてしまうのです。
いつまでもペットの『尊厳』は大切にしてあげたいと思っています。
そして介護される側のペットと介護する側の飼い主がお互いに辛くならないように。
周りの協力も得ながら、無理をしない状況を整えられますように。
『愛犬の介護生活』が少しでも穏やかな日々でありますように。